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診察室の窓から


by italofran55
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対抗同一性と反復強迫Ⅰ

対抗同一性とは、心理学上の用語で自己同一性から、発展させられた概念であろうー自分が育てられた価値に対し反抗的に自己を形成していくことー精神科医、病蹟学者である福島章氏が主に提唱している

このところあまり聞かなくなっているが、私にとっては興味深い概念であるーわたしもそういう時間を持っていたからか

なぜ わたしがこの言葉を思い出したのかと言うと

知り合いの精神科医が 日本のcontemporary artのコレクターで
最近著書をもらい

会田誠や、天明屋尚の絵が大変評価されているということーここ何年かかな
見ているうちに思い出したんですが

それを私なりに評論すると
対抗同一性で説明できる作品が多いと思ったんです

現代の対抗同一性の性向の強い絵画がほんとうにオリジナリティをもちうるか
後世から評価される絵画になりうるのかと考えていました

結論から言えば、あだ花ーカリカチュアにすぎないのではとおもいますね
それを超えているものもあるかもしれませんが

批判精神はあるけれど、こちらの魂を揺さぶる何かにはなっていないかな

資本主義があって、それに対する批判的対抗概念として、社会主義、共産主義が発生した
自分が生まれ育ったものを批判的に見て、自己形成を図るというところでしょうか
元のものを創造的に超えるのはとても大変なんですよね


ここで、本業の話に戻してみると

自己同一性確立の重要な時期は、いうまでもなく、思春期です
そのときに、対抗的要素がないということも、また不自然ではあるが
対抗的要素が強すぎると、精神的、身体的に破綻してしまうかもしれない
文化的創造性もそうでしょう


同一性とは不思議な概念であるが、便利でもあります
人は変化しながら、外界と交流し、変容、変態しながら同一性を保つというのである

同一性の確立は、自己が対象とのかかわり方を確立することと同じである

その後何が起こるかというと
人の一生は、形成された有意識構造と無意識構造からできた自己現象の反復に彩られることとなる
そのときに精神科的病気もかなり明確に出現してくる

最近人類学者の中沢新一氏と自治医大精神科教授の加藤敏氏ーこの人もちょっと天才、下北沢の神経科のむすこさんらしい との対談で

無意識と意識の構造は、表と裏のわけることのできないメビウスの輪のようなもので
中心には穴があるという対談を読みましたが
それまでの意識ー無意識の上部構造、下部構造の図式とは違う画期的なイメージを得ることができました
それは金持ちと貧乏が上部構造と下部構造ではない、表裏のものであるというような捉え方ですね-ただし
簡単に入れ替わるべきと思います


同一性とその結果としての反復行動にて
その人が少し見えてくるのかもしれない

絵画の話から変な方向に話が来ましたが
絵画は結構その点、
無意識的な説明をしやすいし 逆に豊富なイメージを与えてくれるものかもしれません

ただわたしは 現代アートには自分を豊かにしてくれるイメージを持ちえません
すごい情熱がないとコレクションできないのではと思います
対抗同一性と反復強迫Ⅰ_c0156217_20435739.jpg

by italofran55 | 2009-05-06 20:44 | 医学