診察室の窓から


by italofran55
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抗うつ薬が効かないとき

抗うつ薬が効かないとき
どう考えたらいいのだろう

反応しないタイプの人であるーnon responderー代謝の予測も含めて、判断は難しい

難治性ー治療抵抗性であるーこれも軽々に判断できないとある

薬の量が少ないー当然増やす方向を要請される

診断が違うー腕が悪いか(わたしかな)、当然後の症状の展開が違うことはありうる

まずこのくらいは思いつく

治療者側のエラーとしては

診断の違いをあげられていることが多い

①躁うつ病ー双極性障害であったーうつ期の抗うつ薬の使用については画然とするものがない

②精神病状態からくるうつ状態であったー向精神薬が必要なことはある

③性格傾向や環境による要因を考慮に入れていなかったーカウンセリング的接近が必要

④二次性の抑うつであったーcomorbidityの問題もあり
 たとえば、不安性障害、パーソナリティ障害、摂食障害など
⑤身体疾患がもとにあるうつ状態であった
 認知症、脳梗塞、甲状腺機能障害
⑥実は患者さんが言われるとおりに薬を服用していなかった

などがあげられている

治療者側の次の手段としては
抗うつ薬を次第に極量までふやす

それでも効かなければ
違う抗うつ薬にかえる

診断を再考慮して
抗うつ薬一本やりを変更する

むしろ抜いてみる
気分安定薬中心で様子を見る
などが初期としてはよくとられると思う

私の場合は極量投与はなるべくしないようにしている

agitationやactivation syndromeの可能性が高くなる
余計に病像が不安定化し
場合によっては背景に隠されていた
パーソナリティ障害が賦活される可能性がある
などの理由である

杏林大学保健学部の田島治教授によれば

安易な抗うつ薬の投与が
薬物療法関連境界侵犯とも言うべき状態を
治療者側、患者側ともにひきおこし
disease mongering-病気を売る、病気を作ってしまう状態を引き起こしかねない

SSRIそのものの中枢刺激症状により
治療抵抗性の増加に関与したり
結果として性格変化の惹起を起こすとも述べている

うつの診断が確定して治療抵抗性となったときは
短期入院も考慮する
ECT-電気ショック療法もエビデンス的には薦めている

いろいろな外来の精神症状を示す疾患において
とりあえず、うつでしょうというのは
医師にとっても、患者さんにとっても
実は都合のよいことが多い

うつはいまや世界で普通に認められる病気だから

antistigmaという言葉がある
偏見を持たれるような病名をnormalizeするという意味もあると思われる

そういう意味で便利だし
症状の変化を待つ意味でも、時間を稼げるかもしれない

抗うつ薬に否定的な意見も書いたが
じつは生活改善薬として
少量を持続させることは
人生において良い意味もある

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by italofran55 | 2009-10-24 13:41 | 医学
NHKで韓半島の三別抄という番組をやっていて
興味深く見た

高麗の昔の詩歌の選集かなにかとおもっていたが
高麗の将軍の反乱軍の名前であった

韓半島は大国に囲まれ、古来から戦乱が絶えない
地政学的にも不安定な場所である

物語は開城にあった高麗王朝が当時の中華大国ー元に攻め込まれ
融和か抵抗かの選択を迫られ
抵抗勢力が珍島 済州島などに小さな王国を立てていたというのである

済州島には最後に蒙古軍が攻め込んできて
滅亡したと伝えられる

その同じ年代に
沖縄本島で興った王様の石垣造りの王宮の瓦と珍島の王宮の瓦とが
酷似しており、残党が沖縄に逃れた可能性があるそうである

ヨーロッパには北欧、イギリスを中心としてこんな話は山ほどある
アジアにもこんな話があってよい、むしろ胸躍る話と思うが

ただこの地理を思うと複雑である
開城では北の政府の元に人は塗炭の苦しみを舐め

済洲島ではつい何十年か前
反政府勢力7万人が殺され
あの島に眠っている

沖縄も知ってのとおりである

平和な生活を求め、立ち上がり戦争に巻き込まれる
東北アジアの人たちは

シジフォスの神話の主人公のように
苦難にあう

残念なことに、平和は祈るだけではこない
日本に一応の民主主義がもたらされたのも
何千万、何百万人の犠牲者が出た後だ

中国にはもたらされた惨禍の後
革命はおきたが民主主義は来なかった
今も普通選挙があるとの事も聞かない

これからも世界は安穏ではないだろう
シジフォスはわれらの運命でもあるかもしれない
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by italofran55 | 2009-10-19 14:29 | 歴史
夢を見た
もともと持っていた車を手放して新しい車を買ったのだが
やはり、忘れられずもとの車を買い戻そうとしたら
新車もついてきて、2台分の請求をされた
あせっていたら
目が覚めた

実際に買い戻そうとしているのだが
どこか後ろめたい気持ちがあり

寝る前に政府の概算要求があれもこれもで
過去最大に膨れ上がったことを
テレビで見て憤慨していた

その感情のまま寝たので
最近考えている車の話と合体したのだろう

このところ見なくなった夢もある

わたしは地方の中心の高台にある城下町で育ったので
石垣や崖めいたところがおおく
眼下に森や、遠くに河が見渡せるところだった

ちいさな動物園と遊園地をかねたところが
やはり崖の上にあり
子供ながらそこはお気に入りの場所だった

そこでは郡市の小学生の絵画大会があり
なぜか私はいつも3位以内に入っていた

現在、絵はへたくそであるー母が描いていたのか(笑)

夢はジェットコースターで遊園地から
森の上に飛び出してしまう夢である

どこなのだろう
そんなにステキな遊園地はそうはない
ヨーロッパ、北海道、あるいはどこかのvisualで見たものを
意識の上でわたしが故郷の遊園地だと合成したのではあるまいか

ーその遊園地は
昔からジェットコースターのあるような大きなものではない

飛翔と落下と恐怖の底には性的快感欲求が隠れている

わたしはジェットコースターが苦手で
昔 後楽園にあったコースターに一人で乗せられて
てっぺんでぐったりしてしまったことがあるそうである

おそらく夢はそんなエピソードが合体しているのだろう
このゆめをみなくなったが
逆に寝入りばなにふと思い出すのである
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京都大学の精神科心理学教授の新宮一成氏によれば
何回も見る夢はある治癒作用があるのではと述べている

主語ー述語の現実のepisodicな世界から
主語をなくした、または世界全体が自分であるようなsemanticな世界を繰り返し体験することにより

ひとは傷や悔恨、喪失を現実世界とは違った意味で受け入れていくというのである

この教授の著作は難しすぎてついには私には
わからなくなる類のものであるが 
みてからに天才の匂いがする人であるーできる人はえてしてこんな優しげな相貌をしている

わたし的には
ゆめはある感情状態で睡眠をとっていると、不安、恐怖、願望、
それに関連したエピソードを
大脳皮質のcontrollがきかなくなったところで
感情ー記憶に関連した脳ー扁頭ー海馬系が
信号の強いところから
勝手に構成しているのではないかと思われる

もちろん夢機能全体の中の
ひとつには過ぎないが

それがまた昇華や実現につながっているかも知れない
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by italofran55 | 2009-10-16 10:35 | 医学

共同体幻想と抗うつ薬

極端なことを言ってしまうと
われわれは幻想で生きている、あるいは想像のもとに

人間関係でいくと、私たちは本当に親しい人の数は150人を超えないといわれている(平安貴族のcelbreで
activeな階層もこの人数だそうである)

それ以上は関係は薄まるだけでは
同級生の中でも口もきいたことない人多いでしょう?

私たちは現実の原野を歩いているうちに地図を描き出し
地図から学び原野を歩く

行ったこともないところの地図から
世界や宇宙を想像して生きる

外延し包括行動する動物なのである

同じように
大きな集団の人間関係も
現実の人間関係から
想像される人間関係へと行きつ戻りつしている
ある想像を基本に出来上がっているだろう

われわれが生きているー幻想している
感情共同体、職業共同体も
そうして地図のように
expandingし、また人は新たな共同体の構成規範を守るようにして
想像的(危険を避け、安心しできる行動を選ぶ)ー平均的ー律動的に生きる

医学的にいえば
平均ーあるいは正規分布の中にはいっているということが
健康という概念の中では重要である

血液検査の正常値はやはり
ある値の中に入っていることを要求される

精神疾患においては、まだこういったことは
心理テストや画像診断以外では一般的ではないが
それも正常範囲が画然と示されることはない

性格傾向 行動パターンなどは
ある枠の中に入っているー平均的であることが
やはり健全の指標になるのだろう
パーソナリティ障害などの要素も
ある平均的なものからのはずれ方で出来上がっている

健全とは結構地味なことなのだ

ここで共同体ー構成員の平均概念 ができあがっていくと同時に

そこからの外れ方によって
精神疾患も出現してきているのではないかということが想像されるし
よくいわれていることだ

現代においてはglobalisimのもとに
それに侵された社会はとくに

うつ病らしきものーdepressive moodは加速度的に増大し
共同体からの逸脱性を切り捨てるのではなく
治療ということで回復させようとするーこれが近代社会だ

大きな共同体的治療構造の要請の元に
科学および資本から抗うつ薬が生み出され

診断基準、技術、診断者、communicationーdeviceの発達とともに
うつ病らしきものも爆発的に増加し

うつ病に対しては抗うつ薬を投与という
かなりおそるべきpatternarism-ワンパターンが出現してきている

それは大量生産、大量消費の裏返しのようにもみえる
そこからは落ちこぼれる患者もかなり出現するー当たり前かもしれない
共同体からのおちこぼれを共同体の論理で治療しようとするからである

うつ病ーうつ状態ー適応障害は
じつは、共同体からの放逐の恐れから生まれているとも読める

共同体からの放逐が決定的となると
群れから追放された猿と同じで
周辺をうろついてメス猿を瞬間的に寝取るといったアウトロー(逆切れかつ共同体への切望)として生きるかー自己愛毀損型
孤立して死んでしまうかということになるーメランコリー型

地政学的にも外延的ー包括的要素の少ない
実は精神的近代化のなされにくい日本社会において

共同体からはずれてしまったオスが自殺を選んでしまいやすいのは
日本の共同体がもともと
あのおおらかな万葉の時代にも
大伴家持の歌-海行かばなど、にあるように
感きわまると死んでもかまわないといった傾向がほのみえたりする

村社会的な閉じた性向を持ちやすく
またある時期から総動員体制社会になり
生産に傾斜した共同体のみが特化し
複数の共同性に人が存在することの余裕がなくなっているためではないかと思われる
そもそも日本には西欧的な意味での市民社会が現代においてもないといっているヨーロッパの学者もいた
(ものすごい勢いで自殺が増えているー10年間で県庁所在地 一個が消えているのだ)


そうしたものに共同体的論理で推し進めていって
ときに、破綻してしまうのが

抗うつ薬のみ
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による治療の破綻であり
それは共同体の事情から必然とも言えるだろう

うつ気分はある意味では人類ー共同体の宿命である

変態するインフルエンザに対する人の挑戦と同じように
これからも形を変え
共同体からの逸脱傾向が観察されるだろう
それはある種の感染症のように完全に駆逐されたということにはならないだろう

わたしも大量生産的治療に陥らないように自戒したいのだが
できるだろうか  心配だ
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by italofran55 | 2009-10-02 23:03 | 医学