診察室の窓から


by italofran55
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フロイトのイタリア

c0156217_2222654.jpg友人がブログの更新がないとのおたっしで なにを書こうかと 考えていまして
昨日あたりからふっと頭に浮かんできたのがこの本です

このところフランスは行き過ぎていたのがイタリアに興味が移り
帰国して図書館で片っ端からイタリアという名前のつく本を検索していて
であったのがこの不思議なタイトルでした

京都大学の美学美術史の教授 岡田温司氏の書いた物です
京大関連は結構 分析おたくというか フロイトだいすきな才人というか 天才肌が多い

フロイトとイタリアというと あんまり関係なさそうである
一般的に言うと ウィーン・オーストリア ロンドン・イギリス が思い出されるが
この本は微細にかの国へのフロイトの愛と禁制と接近を描き出す。

なぜこのように書けるのかというと
フロイトの書簡と日記と著作と、弟子たちの似たような膨大な記録があるからであろうと思われるし
それはゲーテのイタリア紀行のフロイト版のようにもみえる。

岡田氏の本はまことに精神分析の鮮やかさを患者ー症状でなく 人間ー文化ー美術の分野で描き出し
精神分析の諸教科書よりその本態をえぐり出しているかのごとくである

さまざまなインスピレーションを与えてくれる岡田氏の著作、とくにこの本の中で
でてくるフロイトの著作の中で不思議な題名の物がある
岡田氏が無意識に読むように薦めている感じさえする

モーゼという男 というもので
それも読んでみる

ユダヤ教の中でモーゼは不思議な位置を占めている
代々の血統を述べているのに 彼は出てこない
だが その教えは教義の根本を形成している

かれは何者なのか?
壮大な推理小説を読んでいくように
フロイトは謎を解き明かしていく
シャーロック・ホームズみたいだ かれもユダヤ人か? 名前からして

モーゼはユダヤ人ではなく
エジプト王族の王子と推定している

世界で初めての一神教 アトン教の熱烈な信者だ
アトン教は初めて 愛と自己犠牲をうたった宗教と言われ
その創始者がじつははじめての意識的な世界人ー個人ともいわれる

多神教であったエジプトに一神教が生まれ
争いが起きる

国が乱れたときに王子の一人であるモーゼが
シナイ半島の地方の総督となり
その奴隷たちに一神教を強制する
神に選ばれし人民である

そこから現代の源ともいえるユダヤ教
ユダヤ教を父として克服したキリスト教が生まれていく

モーゼが始めた実験からである
モーぜはその後40年の放浪の後に
カナンの地にたどり着き
そしてなんと自分の精神的な子供である
ユダヤの貴族たちの殺されたというのである
ここにもエディプスコンプレックスがあるとでも言うように

いろいろな逆転がうまれている
ユダヤ人にとって許せないのは
モーゼがエジプト人であったという説であり
それはエジプト側からもいえる

何という始まりと結末で
何という壮大な物語であろう

これが科学でなくても
第一級の推理小説にして神話ではないか

フロイトのイタリアと モーゼという男を 読み終わり
私は不思議な感動におそわれる

フロイトはモーゼに自分を擬しているのではないかー無意識にしろ
人は誰かを描き出すときに自分を参照しないことがあり得ようか
 
精神分析という危険な教義をひっさげヨーロッパの中世精神世界を打ち破るために登場し
多くの弟子を育て誹謗中傷の中で膨大な仕事をし
ナチスに追われロンドンで死す

弟子には反乱され、多数の宗派がその後発生するが
教祖としての地位は精神ー心理世界においては
モーゼに匹敵するだろう

岡田温司氏の著作は濃い
時間があったら精神科医にとって自分をとても豊かにしてくれる
深さがある 全部読んでしまいたいものだが

日常に追われつい
現代風の精神科医のための便利本を読んでしまうのだ。

わたしにとっては精神分析は患者さんに適応するものではなく
一般人間心理 文化を解き明かすときに
重要な鍵となり得る物である

それは魅力と困惑を思い起こさせる
危険な両刃の心理的メスである
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by italofran55 | 2012-04-17 21:38 | 旅行