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診察室の窓から


by italofran55
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元厚生次官事件 ばらまかれた愛と憎悪


陰惨な事件には心からお悔やみいたします。

裏に陰謀がないとすれば、

妄想の結果としかいいようがない。
かの人は妄想性の統合失調症なのだろう

この激しい攻撃の裏に
私たちは、

奇妙にばら撒かれた
愛と憎悪をみる

いつも攻撃の裏には激しい憎悪があり
増悪の近くには 愛や好意や 愛から見捨てられたかわいそうな魂がいる

私には犯人の目つきが焦燥した孤独な目つきであり
他人に注目されてほっとしているような
かわいそうな人に見えた

彼は子犬を愛しており、なくした子犬ー

それはある意味ではこの世に存在しない
愛の理想郷 アルカディアであるのだろう

そこから彼はあらかじめ 永久に追放されている
彼は自ら死を選ぶことによってしか
そこにたどり着けない

かれの生きることへの不器用さは
疾病からくるものか、不適応のかなたには
投影された増悪をが芽生え
ひとしなみに亡くした愛が 彼の中で復活する

知覚過敏であり ときによっては被害的になる
彼の近隣への攻撃はすごかった

ところが彼が死を決意するや否や
彼に被害を及ぼすことで彼の攻撃の対象であった
近隣のものは愛惜の対象となり
かれは、彼にとって大事なエロDVDをプレゼントして
その住まいを去るのである

笑ってはいけない
ほとんどのものを処分した彼にとって
そのDVDは、おそらく一番
人間の肌のぬくもりを感じさせてくれるものであったのかもしれないのだ

彼を株取引で破滅に追いやったパソコンより

奇妙な愛の対象の移ろいと
増悪の対象の構成が始まっているーいつからなのか

10年も計画していたというのは彼の錯覚ではないか
連続はせず 
断片的に愛に乏しかった
彼の人生のなかでの思い出が
時として強化され始める

意識の中から浮かび上がった強烈な
孤独感とそれを癒すはずであった
野犬が結びついたのだ。

奇妙な対象の移ろいと
捻じ曲げられた時間の移ろいがある

これが激しくなると
支離滅裂となってしまい
計画された行為までには至らない

しかし強固な妄想形成があったのか
行為を形成してしまった

であるからして
彼はこの恐ろしい行為を
決起と呼んでいるのである

あるテレビで感情的な評論家が
40代で孤独、経済的にも困り、見たところも悪い
卑劣な男だろうといい

このようなやつらを撲滅しなければと述べていた
あたってはいるが、
あまりにも感情的な私見であろう

事件は起こさないが
このような境遇にいる、かわいそうな人はいっぱいいるはずであり
これからも増えるであろうし
その人たちが実は
自殺者の中核をなしているだろう。
彼の場合は suicide by copといってよい
事件を起こす人はごくまれである

このような人の治療は実際には困難を極めると思われるし
病院でも、投げ出される可能性が高い

早期介入の理論もあるが
一番効果的ではあろう
どのように導入していくか
社会にとっては重要な課題といえる




元厚生次官事件 ばらまかれた愛と憎悪_c0156217_1267.jpg

by italofran55 | 2008-12-01 00:11 | 医学